地方でメディア出演を果たすのはわりと難しいことではありません。しかしながら、各メディア媒体にはそれぞれ固有の特徴を持っていることも知っておかなくてはなりません。
今回は東広島テイクアウトマップアプリと東広島産SMSマスクの販売におけるメディア出演を例に紹介していきます。
オンラインでの購買活動はSNS流入がほとんど

メディア出演と題したのにSNSかよと思われるかもしれませんが、近ごろのSNSを侮ってはいけません。4月上旬の東広島産SMSマスクの販売における購入に至った経緯を集計した結果が次のようになります。
Q.マスクのことを知ったきっかけは何ですか?
東広島産SMSマスク注文アンケート
A.1位 Facebook 2位 Twitter 3位 知人に聞いて
対象:マスク注文者(N=140)
2020年4月上旬はおそらく多くの方にとってマスクは買うことのできない貴重品でした。「マスク」は皆さんにとって敏感なワードであったことは間違いありません。メルカリやヤフオクでは高額な転売販売が目立ったこともあり、Googleでもホットな検索ワードとなりました。
一方で、お金を出してまで買おうとする人は意外にも「SNSを通じて知った」という方が大半を占めていたのです。確かに、一般的な白地のマスクとは異なる独自のマスクではありましたが、衛生的で信頼が担保されたものであれば、みんな必死になってほしかったはずです。
私の出演に加えて、SMSマスクのメディア取材は、
ケーブルテレビ、広島地元テレビ局TSSでのニュース報道
中国新聞、ヤフーニュースでの記事掲載
などでした。一般的にイメージできるメディア露出はすべて行われており、なかったとすれば、全国規模の新聞やテレビ局取材くらいです。

TSSさんによるテレビ報道は、一般の方からの信頼や認知度が大きく向上しました。購入時のメールのやり取りや連絡でも、注文者からの不安や質問の声はほとんどありませんでした。
「地域メディアを上手にハックする」
メディア出演というのは、一見、テレビ出演がインパクトが大きそう、広報力がありそうと思われますが、実はそうではない側面が多いのです。商品の売り上げを上げたい、何か注文数を上げたいということがゴールの場合、必要なマーケティング戦略を間違えてしまいそうなところはここにあります。そこで今回は、SNS、マスメディアなど各メディアの特徴とその広報効果、取り上げられるようにするべきことをご紹介していきたいと思います。
地域でのメディア出演は、4段階構成になっている
全国ネットのテレビCMやSNSでもお金がかかっていそうな広告を目にすることが多いですが、あれほどにお金を投じられる企業体力があれば、もちろん話は別です。
地方でお仕事をされているみなさんにとっては、広告宣伝費が潤沢にあるという状況は少ないでしょう。その中で、メディア露出というのは広告宣伝費がかからず注目を集めることができるので、非常にお得感の大きい広報活動の一つです。
今回は地方でお仕事をする上で、商品販売や注文相談を増加させる施策であるメディア露出を4つの段階に分けてご紹介します。
①Twitter、Facebookのリツイーターに拡散してもらう

察しのいい方は、本記事で最も伝えたい部分が、このリツイーターの重要性であることに気づいたでしょうか。
上記でほとんどお伝えしたようなものなのですが、TwitterやFacebookで頻繁に自分の投稿をリツイート、シェアしていただけるユーザーさん、私は「リツイーター」さんと呼んでいるのですが、こうしたリツイーターさんの情報拡散が、オンラインにおける商品販売や注文数の増加につながることが体感的にわかっています。
何も自前のアカウントのフォロワー数がたくさんいないとだめだというわけではありません。ビジネスをする地域の方をまずはフォローして、いいねをお願いしてみましょう。また、SNSをよく観察して、TwitterやFacebookの他人の投稿をよくシェアしている人を見つけられたらとてもラッキーです。
リツイーターへのオンライン営業活動
よくシェアしていただけるリツイーターの方は、自分の投稿も拡散してくれる可能性が高いのです。もし重要な投稿を行う予定がある場合は、事前にリツイーターの方に「これから情報を公開するからリツイートしてほしい」などと連絡することも効果的です。とても地道なのですが、迷惑にならない範囲でお願いして回るのは、一種のオンライン上の営業活動です。広報活動以外にも日常的にコミュニケーションを取っておくことが重要と言えるかもしれません。
②地元の方が運営する、地域のまとめサイト、ポータルサイトで記事を書いてもらうように仕向ける
個人間のSNSシェアに加えて、個人、地域団体レベルでまとめサイトを運用している方ともつながると効果的です。地域メディアサイトは、地元の情報に特化しているため、町内会の回覧板的要素も担っているんです。
東広島で主要なまとめサイトは以下が挙げられます。
1.プレスネット(東広島・竹原地域)
2.東広島まるひネット
3.号外ネット東広島
まとめサイトと同様に、地域情報を発信しているブロガーさんもいらっしゃると思います。


地域メディアさん、ブロガーさんに記事執筆を促すうえで重要なことは、
・商品やサービスの基礎情報を明らかにする
・運営側から広報用写真、文書、アイコンなどの電子データを公開して、自由にダウンロードできる状態にする
の2点です。一つ目は公式HPなどに商品やサービスの紹介を明示することは、ごく一般的に公式HPを用意して情報を掲載しておくことです。
広報物のデータ公開が記事執筆をラクにする
大事なのは2つ目の「広報物のデータ公開」です。
個人ブログや地域のまとめサイトを運営している中の方は、お一人だけということも珍しくありません。また学生さんや主婦さんなどによる数名のチームで分担しているということもあります。
つまり、私たちが新聞取材をイメージするように、ライターが実際にあなたのもとに赴いて取材するということはまずないと思います。よっぽど親切な方であれば別ですが、ひと記事更新するのにわざわざ取材していれば人的・金銭的・時間的コストは計り知れません。単にめんどくさいです。そこで、あなたのサービスを紹介してもらえるような「準備」を、あらかじめサービス提供者側が用意しておくと、ライターさんはラクに記事を書くことができます。
ブログ記事を更新したことがある人ならわかりますが、他人の商品やサービスを紹介すって結構難しいんです。そのサービスを理解した上で、適切な写真を用意する、価格や購入方法、場所などを明示するだけでも一苦労です。

そこで
・公式に自由に使える写真がある
・写真や紹介文のクオリティが高い
・PowerPointのスライド画像がある
となれば、記事のクオリティが格段に上がります。
SNS用の動画やYouTubeがあったら最高の準備です。

今回の東広島テイクアウトマップアプリにも「報道関係者向けのグーグルドライブのフォルダ」というものが存在しており、グーグルフォルダのリンク共有で公開しております。明らかな盗用や改ざんがなければ、記事執筆や紹介に自由に使っていただけます。
地域で勝手な引用や盗用なんてしたらすぐに身元がばれるので、意外に民度も担保されているんです。完全にとは言えませんが、正しく節度を持って使っていただけることがほとんどです。
記事更新が必要な地元まとめサイトさんにとって、気軽に記事を書いてもらえるような環境づくりは極めて重要であり、サービス提供者側から「用意」しておくとスムーズになります。
さらにまとめサイトの多くは公式TwitterやFacebookを有しているはずです。まとめサイトのアカウントさんで自分たちの商品やサービスの情報を発信してもらうことで、SNSタイムライン上に繰り返し登場して、商品紹介を間接的に行うことができるのです。わざわざSNSの広告を打つようなことはしなくていいんです。
マスメディアへの露出効果 認知度と信頼性向上のみであるが、その2つが大きい

ここからはいわゆる既存メディアへの出演効果とどうしたら出演できるかを紹介します。
マスメディアは、広く多くの方に知っていただける一方で、オンラインでの販売や注文には繋がりにくいの実情です。また、実店舗を構えていたとしても、実際に足を運んでもらうのは簡単ではありません。

当たり前ですが、新聞記事紙面にはQRコードはありません。またHP上にニュースサイトもあると思いますが、すべての記事文章が掲載されることはほぼありません(有料会員のみ閲覧可能など)。つまり、マスメディアによる報道は、あくまで商品やサービスの名前、活動を知るきっかけにはなるものの、実際にググって検索することにはつながりにくいです。
わざわざ「マスメディアの情報を見てググる人」というのは、
・すでにSNSなどで同様の情報を見たことがあり、思い出し程度に検索する
・本当にその情報に惹かれて、興味を持って検索する
のどちらかのユーザー体験が多いと見ていいでしょう。

検索につながらないのであれば、なぜマスメディアへの露出も重要か。
それは
・マスメディアへのコンセンサス的な信頼感がある
・マス的に認知度が向上する
の強力な2点があるからです。
これらの影響力は、例えば「ビールと言えばアサヒビール」ほどに製品と企業名が広く世間一般に知られているレベルに到達しないと手にすることができない、それくらい重要なものなのです。
立ち上げたばかり、中小規模のビジネススケールでは、自力で一般世間の認知度レベルに持っていくのは至難の業です。また安易にCMや広告を打てない中で認知度を継続的に上げていくには、こうしたマスメディアによる取材と発信が欠かせません。
③新聞、ラジオ番組、地元ケーブルテレビへの出演

そのうえで、第3段階目の新聞、ラジオ、ケーブルテレビへの出演は、テレビ取材に比べると取り上げられやすいメディア媒体です。こうしたメディア各局の社員さんに直接、情報提供することも大切ですが、各報道機関宛にプレスリリースの文書を送るのも一つの手段です。プレスリリースというと何とも敷居の高いイメージがありますが、下記のような文書を作って、報道機関のメールなどに送るだけでOKです。

組織から組織へお送りするものになるので、無視されることもありますが、社内共有くらいはしてくれることが多いです。東広島テイクアウトマップアプリでは、実際にリリース直後に中国新聞さんに取材していただき、記事にしていただけました。

左:アプリ開発者のてばさきさん、右:中国新聞記者さん 撮影許可の上
④ローカルテレビ局

テレビ局に取材されるのは最も難しいです。街角インタビューなどはテレビ局のスタッフが個人に取材することもありますが、内容を踏まえた特集の形の取材は簡単ではありません。
どうしたら取材されるか?という明確な基準はありませんが、イメージはあります。
・新規性と独自性 似たものがテレビ局放映地域にない。
・公共性 みんなにとっていいこと
・タイムリーさ その時の社会情勢に合致している
・若い人が頑張っているな
・ご高齢の人でも頑張っているな
・女性の活躍
昨今の社会事情も影響されやすいです。とりわけ男性よりも女性の取り組みのほうがいいし、年齢も若いほど取り上げられやすいです。

さらに緊急事態宣言が解除されたからと言っても、コロナ前のような、「平和でみんなが安心する優しく明るい話題」というのはまだまだ少ないの現状です。コロナの状況下では、「コロナで困っている人に対して何か取り組んだ」というストーリーは社会情勢的に非常に合致したものとなります。
また、今回の東広島テイクアウトマップアプリは、確かに全国的には行われているのですが、広島県内であればだれかと被った取り組みをしているというわけではありませんでした。

私たちは2人とも男性ではありましたが、「学生による開発」ということで、若さやバイタリティーもポイントになったと思います。テレビ局さんとの打ち合わせの中では、学生や若者の情報を取り扱いたいが、なかなか取り上げるレベルのことをしている人がコロナ状況下ではいなかったと聞きました。テレビをつけていれば、定期的に若者や大学生、高校生の話題はニュースで皆さんも見られるかと思いますので、報道側もそれを望んでいるのは確かです。
情報の受け取り方は人それぞれ 多角的に優先順位をつけて発信する

テレビ、新聞、ラジオ、各SNS、それぞれを日常的に見たり聞いたり媒体は人それぞれ異なります。
マスメディアだけに絞っても、タクシー運転手であればラジオ、職場やオフィスで働く人は流れっぱなしのテレビ、時間にゆとりのあるおじいちゃんおばあちゃんは新聞などと言った具合です。これら3つを横断的に情報をチェックする方もいるとは思いますが、3つすべてを毎日見るかどうかと言われれば、それは難しいはずです。毎日の個人の日常に溶け込んでいるマスメディアの媒体は、人それぞれ違うはずです。。
SNSであっても、Twitterをよく見る人、Facebookをよく見る人、Instagramをよく見る人に分かれるのとほとんど同じです。その人に合った情報の受け取り方があり、それらは日常生活や仕事環境と密接に関係しているんです。
情報に対する行動様式の違い
SNSを広く受け入れている若者世代より年上の、30代以上の方で、社会的な信頼を重要視する世代にとっては、マスメディアの報道による信頼がまだまだ厚い層と言えます。また、SNS世代は自らが情報の受け手であり発信する側でもある双方向性がありますが、マスメディアに信頼を置いている多くの世間は、ほとんどが情報を受け取るだけです。自らの感想すらあまり伝えようとしません。
ネット検索自体はスマホやPCを持っていれば誰でもしますが、実際に検索するかどうかで言うと、やはり年齢層高めの人にとっては自力で検索まで動くのはハードルが高いはずです。
まとめ メディアのハックは地道な下準備と広報活動で結果を生むこと
今回は各メディアが持つ性質と、それぞれのメディアに取り上げてもらうための具体的な対策をご紹介しました。また、どれか一つのメディアだけに注力して行えばいいわけではなく、各メディアを使い分けることの重要性を確認しました。とりわけ、マス的発信を狙う場合、それぞれ独立した受け手が存在していることを忘れてはいけません。
さらにローカルな購買活動にはSNSがもっとも効果的であることがわかっており、地道な広報活動が実は一番結果を生みやすいと知ることができたのではないでしょうか。そのためにもまずは自分が発信すること、ほかの人に発信してもらえるように情報公開など下準備を行うことが必要でした。
コロナの状況下で広告宣伝に余裕のある人は多くありません。だからこそ、現在できることから着実に進めていきましょう!