5月10日に学部1年生向けの授業で社会基盤で取り組む社会的な課題と大学の研究室について紹介しました。90分の授業をするのは初めてのことだったのですが、学生の目線でこれからの社会の変化などを伝えられたのでとてもいい機会になったなと思っています。今回は、これから大学の学科選びにも役立つ社会基盤分野の役割についてご紹介します。

※社会基盤は土木の意味で使用しています.
身の回りでよく使うけども学問的にどのような分野なのかいまいち分かりづらいのが建設分野.いまでこそテレビのCMやネットメディアで見る機会が増えたものの,大学でどんなことを扱っているのかを知るのはとても難しい.
1年生向けの概論的な講義

私の在籍している大学では「教養ゼミ」という授業がありまして,1年生から研究室訪問と学科に関連した調べ学習を行う内容です.私の在籍している学科も10ほどの研究室があるため,事前に分けられたグループごとに研究室を訪問して,教授の先生または先輩からのレクチャーを受けたり,テーマに関する調べ学習をグループで発表するなどの学びをするようです.


今回は,私の先生が担当する分の一コマを使わせていただいて,社会基盤の社会的な役割と学生の研究活動,進路相談などについて取り上げる講義をさせていただきました.
大学に入った当初は,英語や数学,概論的な専門分野の紹介,理系であれば,物理の基礎,実験などがほとんどで,自分が在籍している学科がどんな分野なのか,これからどういった講義を受けるのかというのはあまりわからないままなことが多いと思います.私も同じ講義を受けたときに,先輩と質問や相談する機会があればいいのになって思っていながらちょっと小難しいことばかり聞いていたので,その時の自分の知りたかったことを考えながら講義内容を吟味しました.
そこで大学入りたてのころに知りたかったことが,研究紹介,研究室の紹介,大学時代先輩が行っていたこと,進路相談の4つでした.とりわけ,自分の学科は2年生に上がるころにプログラム分けがあったので,プログラムごとの説明や相談する時間は必要だと思っていたのですが、ほかに取り上げることをTwitterで聞いてみました.回答していただいた皆さんありがとうございました.
その結果も踏まえて,社会基盤の社会的背景,研究室全体と学生の研究紹介,プログラム分けや専門分野に関する質問の時間を設けることにしました.
建設分野が担う分野とは


だいぶ終わりが見えてきた東京オリンピックを見据えた一連の東京再開発プロジェクト.臨海部の埋め立て地に新たに建造されている,選手村のマンション群.第二の表参道になりそうな虎ノ門ヒルズには大手不動産が出資して新たに地下鉄駅,「日比谷線虎ノ門ヒルズ駅」を建設中.

ダイアモンドオンラインより「西日本豪雨の教訓、「国難級災害」に減災の備えが必要だ」
一方で,2018年は災害の重なった年でもあった,6月の大阪北部地震,7月の西日本豪雨災害,9月の北海道地震,台風の列島縦断など.これらによって,寸断されてしまった道路や鉄道といった重要インフラの復旧には長期間続いている.
とりわけ,広島県を南北に渡って,広島市内と鉄路のある「芸備線」は前面復旧の時期を2019年秋と発災から一年以上要する.

写真中央で路線が黒くなっているのが不通区間
こうした行政主導のプロジェクト,都市の再開発,災害復旧などを実際に現場で支えるのが建設分野である.
社会基盤と建築の違い

こうした再開発や災害復旧は,社会基盤と建築の会社,部門が協力して作り上げています.大まかに言うと二つの分野は次のようにいえます.
- 社会基盤:人が利用する,橋,道路,河川
- 場所建築:人が長時間滞在する,住宅,オフィス
または,真ん中にあるようにコンクリートやまちづくりの分野はまたがっています.これは,それぞれの分野でそれぞれの研究が行われているということです.コンクリートでも長期間雨さらしになっても耐久性を維持するのと,防音をかねた性質にするのかで,研究アプローチも異なります.まりづくりは都市計画と呼ばれ,社会基盤では国土政策,鉄道・道路・航路などの策定,建築では動線(人がどう歩くか)設計,居住環境の向上などについて研究しています.
人が住むのか,使うのかという違いは日本の構造物建設においてとても重要な意味をもっています.

1600年代より日本の江戸は世界一の人口規模を有するまちでした.そのため,人口が密集して,家事なんて起きたらまぁ大変だったわけです.10年に一回ほどに○○の火事と呼ばれる災害級の火事が頻繁に起こっていたんです.

火災のほかにも,地震による家屋の倒壊,何も無くても夏はべたべた暑くて冬は乾燥して寒いなど,住環境を脅かすリスクが大きかったわけです.とりわけ,
住宅=人が滞在している可能性のある場所
にものを建てる分野には,より厳しい規制をかけることにしたというのが,建築が建築として発展してきた歴史的背景です.一方で,ここまで2つの分野がすみわけされているのは日本くらいです.海外ではあくまで建設分野の一カテゴリーとしてArchitecture, Bridge, Riverが並びます.学科でたとえるなら,大学の学科は「建設学科」であって,建築学科,社会基盤学科と分かれているのはにほんくらいです.
※もちろん枝分かれした理由は様々にあるのであくまで一例です.
基準がちがう社会基盤と建築
そのため,まず,法律から違います.社会基盤では示方書,各法,建築では建築基準法というのがあります.
道路橋示方書は,国土交通省から指示されている道路と橋梁建設における基準、建設フローなど一連のきまりが明記されているものです.正確に言うと法律ではないのですが,日本で社会基盤の建設しているプロジェクトの多くを,国交省,または地方自治体が発注しているので,チェックの基準も国交省の決まりになるのです.

道路示方書はアマゾンでも売っているようです.
建築基準法は,2005年の構造計算書偽造問題(wikipediaより)を契機に,規制がより厳しくなったことでも有名になったので,名前だけは知っている方も多いかも知れません.建築の設計,耐震基準,防火装置の設置など細かい規定があります.

そのため,資格も違います.建築士は建築物,社会基盤の専門資格である,技術士は各分野の構造物の設計しか仕事をすることが出来ません.また,大学の学科も大学に入るときから分かれていることが多いです.専門資格を取る条件に,学部を卒業したことによって得られる,2級建築士,技術士補も,それぞれ
いかがだったでしょうか.私が研究している都市計画分野にも様々な分野がありますので,今後は,都市計画のこと,私の研究について細かく見ていこうと思います.
それでは.